QMSセミナーは研究の最前線に位置する第一線の若い方を招いて、学問交流ばかりでなく人的交流も深めあう事を目的としています。奮ってご参加ください。
*コロナでお休み
スピン軌道相互作用を有するIII-V族半導体中では、電子スピンに有効磁場が作用する。ランダムに運動する電子スピンに対しては、この内部磁場がスピンの緩和現象をもたらす。一方、電子スピンの運動を揃えてスピン軌道相互作用を制御できれば、内部有効磁場を利用し、ゼロ磁場中でのスピン制御、スピン緩和の抑制、長距離スピン輸送などが可能となる。本講演では、III-V族半導体の中でもスピン軌道相互作用が比較的大きいGaAs・InGaAs系量子井戸中の電子スピンに着目し、内部有効磁場によって生じるスピンの緩和現象や時空間ダイナミクス、またはそれらの観測方法について紹介する。
縮退及び擬縮退は、高い導電性や磁性、ヤーン・テラー効果など、通常の電子系にはない特異な性質や現象を引き起こすトリガーとして知られている。本講演では、金属クラスターにおける異常な軌道縮退に関する最近の発見をはじめとして、これまでに行ってきた理論的研究を概観し、「縮退と擬縮退がどうやって生じるのか」、「物性や現象にどのような影響を及ぼすのか」について議論したい。
物質の新しい見方であるトポロジカル相に関して紹介する。トポロジカルなバルクを特徴づけるベリー接続とチャーン数、ベリー位相について説明し、表面状態として実験に観測されるエッジ状態との関係であるバルク・エッジ対応についても紹介したい。
層状Si化合物を界面活性剤で処理、あるいはSi層を有機化合物で修飾すると、単層剥離が可能となる。得られたシートは母相の結晶構造を維持しており、横方向のサイズはマイクロスケール、厚さはナノスケールのまさにナノシートである。シートの物性は修飾基で制御でき、光応答特性や伝導特性の新規な物性が発現する。講演では、単原子層だけでなく、新規なSiとGeの二層構造の成長に関しても紹介する。
石油資源に依存しない各種バイオベースの化成品や、環境に配慮した化学プロセスの開発が盛んに行われている。 バイオベース界面活性剤に関しても例外ではなく、国際標準化の動きも活発化している。 糖、アミノ酸、ペプチド、脂肪酸など、骨格の多様性が特徴の一つであるが、ペプチド本来の生体の仕組みを踏まえた生理活性に加えて、サステイナブルな素材に関するニーズの高まりから、最近ではペプチドベースの界面活性剤が注目されている。 ペプチドの界面活性は、通常の界面活性剤のように必ずしも『親水基と長鎖アルキル基』といった明確な骨格を持たなくても、『疎水性のアミノ酸側鎖と親水性のアミノ酸側鎖が局在』や『二次構造の形成に伴う特異な疎水面、親水面の形成』によって発揮される。 近年のペプチドの合成技術の発達や、バイオテクノロジーの進展により、これまで困難であった安定なペプチドを量産する技術も確立しつつある。 本講演では、各種のペプチドベース界面活性剤の自己集合挙動など、多彩な機能と応用についてご紹介したい。
近年様々な半導体において、高移動度二次元電子系が作成可能となり、整数のみならず分数量子ホール効果の研究も強磁場中で可能となっている。 量子ホール効果は強磁場二次元電子系で観測できる現象であり、輸送測定による研究が主であるが、 可視光やテラヘルツ光といった光を使っての研究も興味深く、明らかになっていない点も未だ多い。 現在当グループでは、化合物半導体, グラフェンといった様々な物質中の高移動度二次元電子系について、 磁気発光やサイクロトロン共鳴といった「光学的」な手法を用いて研究を行っているところである。 セミナーでは、強磁場におけるこうした手法の有効性と最近の研究成果について紹介を行いたい。
A semirelativistic density-functional theory that includes spin-orbit couplings and Zeeman fields on equal footing with the electromagnetic potentials, is an appealing framework to develop a unified first-principles computational approach for noncollinear magnetism, spintronics, orbitronics, and topological states. The basic variables of this theory include the paramagnetic current and the spin-current density, besides the particle and the spin density, and the corresponding exchange-correlation (xc) energy functional is invariant under local U(1)×SU(2) gauge transformations. The xc-energy functional must be approximated to enable practical applications, but, contrary to the case of the standard density functional theory, finding simple approximations suited to deal with realistic atomistic inhomogeneities has been a long-standing challenge. Here we propose a way out of this impasse by showing that approximate gauge-invariant functionals can be easily generated from existing approximate functionals of ordinary density-functional theory by applying a simple minimal substitution on the kinetic energy density, which controls the short-range behavior of the exchange hole. Our proposal opens the way to the construction of approximate, yet nonempirical functionals, which do not assume weak inhomogeneity and therefore may have a wide range of applicability in atomic, molecular, and condensed matter physics.
グラフェンのケイ素版ともいえる一原子厚みのシリコン超薄膜「シリセン(silicene)」が、新しい二次元物質として注目を集めている。
「自立した」シリセンを中心とする理論的な研究が先行しているが[1-4]、近年、単結晶基板上に形成された「自立していない」エピタキシャルシリセンに関する実験的な報告が相次いでいる[5-9]。
シリセンは、炭素同士の強固なsp2結合からなる原子レベルで平坦なグラフェンとは異なり、隣接するケイ素原子同士が面外方向に遠ざかる「座屈した」構造が安定である。
理論的な研究からは、その座屈した構造にも関わらずグラフェン同様の特異な電子状態を有すること[1,3]、電場を印加することでトポロジカルな量子相転移が期待できること[4]などが予測されている。
しかしながら、それらを実験的に確認できるような、基板から自立したシリセンの形成は達成されていないというのが現状である。
本講演では、シリコンウェハー上に成長した単結晶配向二ホウ化ジルコニウム薄膜を基板に、ウェハーから薄膜表面に拡散したケイ素を原料として自発的に形成されるシリセンの結晶構造と電子状態とを実験と計算から明らかにした我々の研究成果[9-11]を中心として、エピタキシャルシリセンの構造と性質に基板が及ぼす影響、シリセンと基板との相互作用などについてお話しする。
分子間相互作用は有機結晶、分子液体、生体分子などの分子集合体の構造を支配し、機能や物性にも影響を与える。このため、分子集合体の研究においては分子間相互作用の詳細な情報を必要とすることが増えている。種々の実験手法からも分子間相互作用に関する情報が得られるが、分子間相互作用の詳細(相互作用の強さ、方向依存性、引力の原因など)を実験手法だけで明らかにすることは容易ではない。一方、ab initio 分子軌道法などの第一原理計算を用いれば、分子間相互作用の詳細を比較的容易に明らかにできる。以前はこうした計算を行うために計算機センターの大型計算機を長時間使用することが必要であったが、現在はサーバと呼ばれるデスクサイドのパソコンでほとんどの計算を行うことができる。このセミナーでは ab initio 分子軌道法を用いた分子間相互作用の解析法と精度、それぞれの分子間力の寄与を見積もるためのエネルギー分割法について説明するとともに、π/π 相互作用やハロゲン、カルコゲンの相互作用の解析例などを紹介する。
[1] K. Takeda and K. Shiraishi, Phys. Rev. B 50, 14916 (1994).
[2] G. G. Guzma´n-Verri and L. C. Lew Yan Voon, Phys. Rev. B 76, 075131 (2007).
[3] S. Cahangirov et al., Phys. Rev. Lett. 102, 236804 (2009).
[4] M. Ezawa, Phys. Rev. Lett. 109, 055502 (2012).
[5] C.-L. Lin et al., Appl. Phys. Express 5, 045802 (2012).
[6] H. Jamgotchian et al., J. Phys. Condens. Matter 24, 172001 (2012).
[7] P. Vogt et al., Phys. Rev. Lett. 108, 155501 (2012).
[8] B. Feng et al., Nano Lett. 12, 3507 (2012).
[9] A. Fleurence et al., Phys. Rev. Lett. 108, 245501 (2012).
[10] R. Friedlein et al., Appl. Phys. Lett. 102, 221603 (2013).
[11] C.-C. Lee et al., Phys. Rev. B 88, 165404 (2013).
III-V族化合物は半導体デバイス材料として非常に重要な物質である。 第一原理計算を用いることにより、III-V族二元化合物の単原子層物質の 新しい安定形状を発見した。 発見された形状の基本単位格子は長方形であり、その中に、4つのIII族原子と、 4つのV族原子が含まれている。 III族原子と、その最近傍の3つのV族原子は、同一平面上に存在するが、 この結合はsp2混成軌道ではない。 V族原子を取り囲む結合角は、sp3混成軌道の結合角よりも小さい。 GaPの発見された形状は間接遷移型半導体である。 GaAs, InP, 及び InAsの発見された形状は直接遷移型半導体である。 したがって、これらの化合物の発見された形状は、水分解光触媒などの 半導体デバイス材料として有望である。 発見された形状は、他の物質から成る単原子層物質でも安定形状となるかもしれない。
Recent investigations into the viscoelastic properties of matter at the mesoscopic length scale have relied on some inference of thermal fluctuations of the system, followed by its conversion into some physically meaningful modulus - This is known as passive micro-rheology. Currently popular methods, despite their theoretical robustness, introduce artefacts into the moduli and have latent inefficiencies. We introduce a new methodology which combines well-known data reduction techniques with a newly developed Fourier transform algorithm that allows visualisation of moduli in realtime. These are successfully applied to kinetic Monte Carlo and video microscopy measurements of Brownian motion of colloidal probes in viscoelastic fluids, with the promise of a computationally light means of handling both computational and experimental data in soft condensed matter investigations. 本講演は英語で行われます
半導体量子ドットとAharonov-Bohm干渉計を組み合わせた、メゾスコピック系という人工量子系における量子輸送、ならびに量子コヒーレンスの制御について、理論的に調べた結果を紹介する。 量子力学における測定の反作用という概念は、従来は2重スリット実験のような思考実験としてのみ議論されてきたが、メゾスコピック系においては、これを実験的に詳しく調べることが可能となってきた。量子状態の測定は、 量子計算において必要不可欠な要素であり、量子情報処理において位相緩和の過程を理解することは重要である。従って、量子状態をコヒーレントに制御するために、測定装置からの反作用の機構を明らかにすることは、 意義のあることである。本講演では、量子ドット電荷計によって誘起される位相緩和の物理的な起源を明らかにするとともに、量子ポイントコンタクト電荷計との相違点を示す。
量子ドットは、天然の原子と同様の殻構造やフント則を示すことが知られ、人工原子と呼ばれている。人工原子を2つ以上並べると人工分子としての性質を示し、
電子が量子ドット間を行き来することで、多彩な物性を示すことが知られている。本セミナーでは、人工分子において、電子が行き来することによって生じる共鳴現象を中心に、関連した我々の2つの実験:
(1) 2重量子ドットを用いた波動関数mapping
(2) 3重結合量子ドットにおける「共鳴」と電子状態 を紹介する。
ナノカーボンを含むナノ化合物における磁性に制御について述べる。
1.カーボンナノチューブにおけるエルステッドの実験
2.非磁性元素により形作られるナノ構造の磁性
3.その他
二酸化チタン、酸化鉄、導電性ダイヤモンドなど機能材料を電極とした溶液の浄化処理、光エネルギー変換について紹介をする
金属イオンと生体分子との相互作用およびプロスタグランジン類の生合成反応機構に関する量子化学的研究
我々の研究室では「はかる」「さがす」「つくる」という3つの柱に基づいて熱電の物理と熱電材料の研究を行っている。
本講演ではこのなかから,微小領域の熱電性能を測定するために開発した「ポイント・コンタクト法」について紹介する。熱電材料の表面に鋭い探針を接触させ,交流または直流で電流電圧測定を行うと,非線形なIV曲線が得られる。このデータを解析することによって,微小コンタクト部分の局所ペルチェ係数を算出することが出来る。講演では測定原理からはじめて,装置,測定法,およびBi2Te3熱電材料への応用の結果を示す。
これに加えて,磁性体と熱電物質の複合材料の物性についても紹介する予定である。
金属イオンと生体分子との相互作用およびプロスタグランジン類の生合成反応機構に関する量子化学的研究
1次元電子系は大きな量子揺らぎのため平均場近似では記述することができません。こうした大きな量子揺らぎを複数のスレーター行列式の重ね合わせで記述するのが共鳴Hartree-Fock法です。本講演では、共鳴Hartree-Fock法の基本的な考え方を説明し、 1次元電子系における電子格子相互作用と電子間相互作用の競争or協調を量子揺らぎの視点から考察します。